東京高等裁判所 昭和31年(ラ)704号 決定
建物の分合、其の番号若しくは構造の変更、其の滅失、其の建坪の増減又は附属建物の新築があつたときは、其の建物の所有権の登記名義人は遅滞なく登記を申請することを要することは不動産登記法第九十一条の定めるところである。(家屋台帳法第十四条も、価格を記載すべき家屋の増築があつた時は所有者は一箇月以内に登記所に申告すべきことを規定している。)而して所有者が建物を増築しながらその建坪の増加につき右規定による変更登記を申請しなかつた場合において、債権者が建物の登記簿上の表示と実測坪数とを一致させるため、民法第四百二十三条、不動産登記法第四十六条の二、第六十条の二の規定に基き所有者に代位してその変更登記を申請することができることは抗告人の指摘するとおりであつて、登記の表示の正確を期する上からは望ましいことではあるが、かかる手続を経ないで、債権者が登記簿上の表示に基いて債務者所有の建物につき強制競売の申立をした場合においても、増築に拘らず建物が前後同一性を失わず、競売申立書において登記簿上の坪数によつて表示された建物が現実に存在する建物を指称し、これが競売の目的となつているものと考えられる場合においては、競売裁判所は、競売目的たる建物を表示するにあたり、登記の表示を変更させた上これを記載することをせず、単にその登記簿上の坪数と実測数を併記することにより、適法にその競売手続を進行せしめ得るものと解するを相当とする。飜つて本件についてこれを見るに、本件競売の申立書には競売に付すべき不動産の表示として、登記簿上の表示に従い一、木造瓦葺二階建居宅一棟建坪十一坪、二階五坪と記載し、原裁判所は右表示に従つて強制競売開始決定をなしたが、その後右建物は増築の結果(所有者たる抗告人も右増築の事実を争わないものと認められる。)実測建坪十二坪三合五勺、二階五坪となつていることが判つたので、爾後競売期日公告その他本件競売目的たる建物を表示するにあたり、常に前記登記簿上の坪数と実測坪数とを併せ掲げていることが明らかであり、而して記録編綴の鑑定人陣内与三作成の評価書の記載によれば、増築された一坪三合五勺の部分は独立の建物ではなく、基本の建物に附加して一体をなし前後同一の建物たることを失わないものであり、本件競売申立書に記載された建物はこの現存建物を指すものであることが認められるから、原裁判所の手続には何等の違法がない。従つて抗告人の主張は採用し難い。
(渡辺葆 牧野 野本)